昨今とてもスパイン調整に関するご質問が多く頂きます。

アメブロ時代には何度か書いたことがありましたが、スパイン調整に関しては正直あまり意味が無いと考えています。 
まず最初にお断りしておきますが、このことはあくまで私が個人的に考えていることであり、スパイン調整自体やスパイン調整を行っている工房さんを否定・非難するものではありませんので、何卒ご了解いただきたく。


その理由として幾つかのことが挙げられますので、順番にご説明していきます。


 
1.正しくスパインを見つけ出したと仮定して、挿す方向がまちまちであること。

 45度、90度、180度、270度などなど、スパイン挿しの方向には様々な方法があります。
様々な方法があるということは、セオリー(理論)が確立されているのであれば考えにくいことです。実際に多くのメーカーの多種多様なシャフトを計測している経験からも、スパインが存在するということ自体には異論はありませんが、 理論的に確立されていない以上、どの方向に挿すべきか不明確と言わざるをえません。



2.カーボンシャフトには何本ものスパインがあり、そのスパイン自体も直線であるとは限らない。

 カーボンシャフトはその全長に渡って1枚のカーボンシートで巻かれている訳ではありません。チップ部分に高弾性のシートを使用し、中間部~バット部分にかけて低弾性のシートを使うこともありますし、高弾性のシートと通常の弾性のシートを同じ部分に使ったりシート自体を斜めになるように巻いたりとシャフトメーカーは日々研究を重ねてシャフトを作っています。
シャフトのきれいなテーパーの中には、様々な特性を持つシートが様々な形で巻かれている訳ですから、シャフトセンターの1点をセンターフレックス計で測定しただけでは、何本ものスパインの中で一番目立つスパインの1点のみを計測しているに過ぎません。

 そうした複雑なカーボンシャフトの正確なスパインを計測するには、シャフト全長を1cm程度の間隔で且つ360度を1度~2度単位で計測し、3次元で硬さを見る必要があると考えます。
 45インチのドライバーとすると、ヒールまでおおよそ44インチ112cmありますから112×180=20,160回の計測をする必要が出てきますが、パターを除く13本とすると20万回程度計測を行わないと(私個人的に)正確と言えるスパインは測定できないと考えています。

これ実はやったことがあるのですが、本当に膨大な作業量です。私個人的な検証のために行ったのですが、工賃を頂いての作業となると、計測だけで1本当たり3万円は頂かないと不可能です。



3.そもそもスパイン自体が存在しないことになっているので、プロがみんなスパイン挿しをやっていると言うのは疑わしい。

用具規則によると、次のような記載があります。

2  b  曲げ特性とねじれ特性 
 シャフトは、その全長に沿ってシャフトのどの1点をとってみても、次のようでなければならない。
(i)シャフトをその縦軸周りでどのように回転させるかに関係なく、たわみが同じとなるように曲がること。  
(ii)両方向とも同量にねじれること。
 
これはスパインが存在してはいけないということですので、プロがスパイン挿しを公言しているとしたらそのシャフト自体がルール不適合ということを証明することになります。

BoseIronFactoryでもスパイン挿しを希望される方は多いですが、プロでスパイン挿しを希望される人はいません。たとえアマチュアであっても、用具規則に違反する可能性があるクラブで競技に出るのはBoseIronFactoryとしてはお勧め出来ませんね。



4.可変スリーブのクラブは使えないクラブになるはず。

多くのメーカーから可変スリーブ(カチャカチャ)のクラブが発売されていますので、多くの方は打ったことがあると思います。
もし本当にスパインが悪さをするのでしたら、可変スリーブのクラブは使えたものではないはずです。
ですが、実際にはトーナメントプロを始めとするゴルファーの多くが可変スリーブのクラブで良い球を打っていますよね?
 




BoseIronFactoryも商売です。
しかも売上げの90%以上が工賃がしめる工賃がメインの商売です。

ですので、スパイン挿しで工賃をいただけて(とはいっても1cm刻みの2度刻みではやりませんが)、お客様に対してもプラセボ効果以外の本当の効果があるのであれば、スパイン挿しを推奨して、少しでも多くの売上げに繋げたいです。

ですが、プラセボ以外の効果はほとんど見つけられないというのが私なりに調べた状況ですので、BoseIronFactoryではスパイン調整はメニューには入れておりません。
(ですが、効果が無いことも確認はしておりませんから、やれと言われればやりますし、出来ます。別料金ですが・・・)


ロフトやライ角の0.1度などもそうなのですが、そうした細かい点にばかりとらわれて今までのゴルフは劇的に進歩したでしょうか?
枝葉末節にとらわれていると、本質を見失うこともあります。 

良い球を打てているクラブが1本あるのでしたら、それがきっと本質(=適正MOI)なのではないかとファルコンは考えるのでした(^^;;





重ねて言いますが、このブログの内容は私個人が感じたこと、考えたことを書いているだけで、他の工房様やスパインを否定・非難するものではございません。