ゴルフ「北の国から」

ゴルフトゥデイでの連載「ゴルフ〜北の国から〜」をしていたファルコンまつばらです。 クラブMOIマッチングを中心とした理想の工房を北海道に作るまでの模様、そしてクラブMOIマッチングの今とこれからを中心に様々なことに顔を突っ込んでいきます(^^;; なお、純はもしかしたら出てくるかもしれませんが、蛍や五郎さんは出てきませんので、念のため・・・。

May 2021

態度が悪かったり、スロープレーだったりで、強い割にはあまり人気があるとは言えないブライソン・デシャンボー。

デシャンボーと言えばワンレングスアイアンというくらいに有名ですね。

実はBoseIronFactoryでは、デシャンボーがアマチュアで頭角を現す前からワンレングスアイアンの研究と検証をしてきました。
ワンレングスアイアンは各番手ともに同重量のヘッドで同重量のシャフトを同じ長さで組んでいますから、クラブMOIは基本同じになりますから。
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こちらが3-PWの8本のワンレングスアイアンで、2014年に製作したものです。

長さは全て37インチで、クラブMOIが高すぎないように、ヘッドの重量も考えた上で製作しました。


で、結果から言うと、ほとんどの人が、短い番手ではロフトからすると少し飛びすぎ、長い番手では全然飛ばないという結果になりました。
飛距離の階段が上手く出来ないんですね。飛距離の階段が出来てこそのアイアンセットですから、これは致命的です。

ワンレングスアイアンが普及しない原因はこのことにあるのですが、では何故こうした結果になるのか?という事を考察していきましょう。

まず、クラブMOIは同じなので、原因はクラブMOIの違いによるものではありません。

普通のアイアンセットと違うのは、長さが同一であるということと、ヘッド重量も同一であるということです。


通常のアイアンセットの場合は、長さは0.5インチ刻みでヘッド重量は7g刻みです。
クラブMOIマッチングの場合は長さは基本0.5インチ刻みで、もう少しヘッドの重量差をつけることで同一MOIにすることが多く、重量差だけで難しい場合は0.1インチ程度の長さの差が出てきます。

ワンレングスの場合、番手が長くなっても長さも重量も変わりませんから、全てのクラブで同一のヘッドスピードになりますが、通常のクラブ、クラブMOIマッチングのクラブの場合、ロングアイアンになるにつれて長くなって軽くなることから、ヘッドスピードも上がります。

ロフトが立つに連れて、必要とされるヘッドスピードも速くなっていくので、ロフトに見合ったヘッドスピードが出せないワンレングスアイアンは上の番手に行くに従ってどんどん飛距離が出なくなってくるという訳です。


では、一般ゴルファーがワンレングスアイアンで飛距離の階段が出来ないのに、なぜデシャンボーは飛距離の階段が出来ているのかを考察していきます。

一般のゴルファーのヘッドスピードはドライバーでおおよそ40~42m/sといった所なのに対して、デシャンボーは60m/s程度です。
一般ゴルファーよりも1.5倍もヘッドスピードが速いデシャンボーなら、37.5インチのワンレングスアイアンでも飛距離差を付けるに十分なヘッドスピードがあります。

だからデシャンボーはワンレングスでも問題は無いのです。


ちなみに、そのデシャンボーですら、2021年のクラブセッティングを見ると6番からしかアイアンは入れておらず、4番5番はアイアン型のユーティリティです。
2020年の4番5番はかろうじてアイアンではありますが、専用設計されたユーティリティに近いアイアンになっています。

デシャンボーでさえ、4番5番を6番以降のアイアンヘッドとは違うものにしているということは、上記の考察が正しい事を推測させると言っても良いでしょうし、平均的なヘッドスピードの一般ゴルファーがワンレングスアイアンを使うのは危険であると言っても良いと思います。


ではワンレングスアイアンに未来は無いかというと、そうではありません。

BoseIronFactoryで一時期発売していたワンレングスアイアンはキチンとその点を考慮した上で設計しています。
それは、5~PWの通常の6本セットでは無く、5本セットでの販売という形で、5本それぞれのロフト設定を、25度、30度、35度、40度、45度と、通常の4度刻みではなく、5度刻みにすることでロフト差を付け、飛距離の階段を作るようにしたものです。

この設計はバッチリで、キチンと飛距離の階段も出来たのですが、何故現在は販売を取り止めている家というと・・・。


そこまでしてワンレングスで得られるメリットって、普段から行っているクラブMOIマッチングで得られるメリットと何も変わらないんです。
むしろヘッドの選択肢は限られてしまいますし、5度刻みのワンレングスの場合、ヘッドスピードが遅めな人は7~8ヤードピッチでの飛距離の階段、ヘッドスピードが早い人だと13~14ヤードの飛距離の階段になってしまうので段差が高すぎたり低すぎたりというデメリットもあります。
更には長さが同じなので番手を間違えることも頻繁に起こります。

そうしたメリットよりもデメリットの多い状況の中、クラブMOIマッチングという解決策のほうがやはり優れているということで、ワンレングスアイアンの発売は止めました。

ブライソン・デシャンボーが「ゴルフの科学者」を自称しているのに対して、私は「ゴルフの物理学者」を自認していますので、(売れるというだけで)ワンレングスアイアンは今後も基本的に作らないと思います。

ずっと更新せずにおりましたが、珍しく2日連続の更新です。


さて今回は皆さん気になされるヘッドスピードのことを例にとってお話ししましょう。

クラブを1インチ伸ばせば約1m/sヘッドスピードが伸びて、3~6ヤード飛距離が伸びるという神話があります。
このことは誰しも疑うことなく、まことしやかにお話されていますが、そこは百戦錬磨のゴルフ記者だったり評論家だったりしますから、「1インチ伸ばすと1m/sヘッドスピードが速くなると”言われています”から・・・」と皆さん他人のせいにしています。

これは実際にはほとんど伸びたためしがないからではないかと。

こうしたことに対して疑問を持つのがクラブMOI的思考の第一歩です。
実際に計算してみる。検証してみるというのがクラブMOI的思考の実践となります。

45インチのドライバーで1インチ伸ばした場合、その長さは45×25.4=1143mm→46×25.4=1168.4mmになります。

ヘッドスピードは周速度といって、回転運動における外周部の速度です。
同じ回転数で回転した場合、半径が大きくなれば周速度=ヘッドスピードも上がると言う事になります。
この点においては理論的整合性は取れていることになりますが、実際のところはどうかと言うと、これまた話が違ってきます。


ヘッドスピード40m/sの場合の回転数は、回転数 = 周速度40m/s ÷(直径2286mm × π)
ヘッドスピードが40m/sで45インチの半径とした場合、回転数は5.56975回転となります。

回転数を5.56975回転で固定した場合、半径が1143mmから1168.4mm(直径2336.8mm)となった場合の計算式は、周速度 = 直径2236.8mm × π × 回転数5.56975 となりますので、40.889m/sとなります。
1m/sまではいきませんが、0.9m/sなのでほぼ正しいといえますね。

と思われるでしょうが・・・・、実際にスイングする時ってクラブだけがクルクル回る訳でありません。
腕や身体全体も動いてこそのスイングとなるわけです。
体の回転まで入れたいところですが、ここは譲って腕までとしましょう。

私の肩から手首までの腕の長さが550mm位あります。
半径1143mmに550mmを足して、半径1693mm。
1693mmでヘッドスピード40m/sの場合、回転数は3.7603回転。クラブだけの回転数と違って、ずいぶんとゆっくりになりましたが、実際に動画を撮って検証してみると確かにその通りになります。
そうなると45インチから46インチになると1693mmに25.4mmを足して、1718.4mm×2=3436.8mmが直径となります。
その場合の周速度の計算は、周速度 = 直径3436.8mm × π × 回転数3.7603=40.6m/s
まだ四捨五入すれば1m/sになりますけれども、1インチにつき~ということですから、2インチ伸ばして47インチにしたとすると、直径が3487.6mmですから、2インチ伸ばしても41.2m/sにしかなりません。
ここまで来ると、いくらなんでも盛り過ぎと言わざるを得ません。

ですが、確かに元々の周速度=ヘッドスピードが速ければ、1インチ伸ばして1m/s上がる人もいます。計算上は45インチでのヘッドスピードがおおよそ70m/s以上ある人です(笑)
70m/sなんてスピードは決してなんちゃってのドラコンプロでは出せないヘッドスピードです。

そして、大切なのはこの計算はもちろん1インチ伸ばしても2インチ伸ばしてもクラブMOIが変わらないと言う前提となります。

おおよその計算値でありますが、平均的なドライバーもクラブMOIが2830kg-c㎡で、単純に1インチ伸ばすと、クラブMOIは2989.4kg-c㎡となり、160kg-c㎡近いクラブMOIが増大します。
アイアンの1番手で約10kg-c㎡の変化ですから16番手分のクラブMOIが増加することになります。

※アイアンの1インチが2番手分なのに対して、なぜ同じ1インチで16番手分ものクラブMOIが増大するのか?=5番アイアンでも38インチ標準で、ヘッド重量は7gピッチで軽くなっていきます。今回の場合はヘッド重量が同一で、元々45インチと5番アイアンよりも7インチ長い。クラブMOIは長さの2乗に比例して高くなりますから、2乗分高くなります。


2インチ伸ばすと3149kg-c㎡となりますから、それではよほどのゴリラでなければまともに降ることすら出来ずに右に飛んでいくしかないドライバーとなります。


クラブMOIが変われば振る事自体によりチカラが必要となりますから、2インチ長くなると相当ヘッド重量を軽く(計算上は23g程度)しないといけないでしょう。


このように単に”言われている”ということを信じて実践してしまうと、整合性が取れないばかりか、実際にもかえって振りにくくなるだけのドライバーが出来上がります。
本当に1インチで1m/s伸びるのであれば、ルール上48インチまでは許されているので、48インチのドライバばかりになっても良いはずですが、実際には48インチのドライバーはほぼ市販されていません。
このことは1インチ伸ばすと1m/sヘッドスピードが上がることの逆説的な証明とも言えます。

逆に言うと45インチのドライバーではなく、44.5インチにするだけでもクラブMOIは大幅に下がりますから、振りやすくなるので、ドライバーが右に行きがちな方は0.5インチカットするだけでもものすごく振り心地は良くなりますので、お勧め出来ますね(^^

もちろん、こうした振り心地を数値的に表し、可視化出来る、クラブMOIマッチングでしたら、もっとお薦めですが・・・(^^

ということで、今回は文字ばかりになってしまいましたが、ご容赦くださいませ。

シャフトのしなりで飛ばす!!とかよく言われています。

シャフトのしなりでヘッドを加速させる!!というのもよく言われています。


少し前はシャフトのしなり戻りが飛ばしの秘訣!みたいにも言われていましたね(^^;;

その”しなり戻り”を高速シャッターで撮った写真で説明する方もおられましたね。

ローリングシャッター

こんな感じの写真ですね・・・。



しかしながら、実際にしなり戻りがどの程度あるかは、ちょっと疑問が残ります。
というのも、同じゴルファーの同じシャフトの(要するに同じクラブ)で撮った写真でも、下の写真のようにしなり戻っていない状態でインパクトをむかえる写真もあるんです。

グローバルシャッター
この写真です。

では、なぜこのような違いが出てくるのかを考えてみましょう。

この2つの写真で違うのはカメラのシャッターの構造です。


上のしなり戻りの写真は一般的なカメラに採用されている、ローリングシャッターで撮った写真で、下のしなっていない写真はグローバルシャッターという構造のカメラで撮った写真です。

ローリングシャッターは画面の(一般的には)上から下に向かって、順番に記録していく方式で、グローバルシャッターは画面の全てを即時に記録していく方式。

プロ用の一眼レフカメラで実際のローリングシャッターの動きをご覧いただきます。



動画でも静止画でも、ローリングシャッターのカメラが多いので、動きの早い撮影物では上と下で記録するタイミングが違うので、記録された画像にも歪みが出てきます。

では次にローリングシャッターとグローバルシャッターによる映像の違いを御覧ください。



特に注目したいのはメインローターの動きではなく、尻尾についているほうの垂直に回転するローターの動きです。

本数こそ違いますが、ゴルフスイングと基本同じ動で逆の回転(反対から見ると逆ではないですが)です。

シャッターの違いをわかりやすく説明してくれているサイトがありましたので、ご紹介します。

【シャッターの基本】ローリングシャッターとグローバールシャッターの違い - ケイエルブイ (klv.co.jp)


このようにローリングシャッターのカメラで撮った場合、撮影対象が早く動く場合には歪みが出てきます。
この歪みをもってしなり戻りとするのは正直早計と言わざるを得ないかと考えられます。


これはしなり戻りを否定するものではなく、しなり戻りはあるんだけど、1枚目の写真にあるように極端なしなり戻り(に見える)現象は、ローリングシャッター現象と呼ばれる構造的なものから来る歪みであるということです。

こうした写真を見せられると、すぐに信じてしまいそうになりますが、一歩引いた形で冷静に考えてみると、分かってくる事も多いです。

スイングバランスとクラブMOIもそうですが、ロングアイアンは右に行きやすいとか、1インチ伸びるとヘッドスピードが1m/s伸びるとか、ライ角で方向性が決まるとか、一般的に信じられていることの中にも突き詰めていくとそうでは無いことがゴルフ業界には数多くあります。

久々のブログですが、少しづつでもこうしたことを取り上げていきたいと考えています。
(業界からは嫌われそうですが・・・www)

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