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HAYABUSA Ironのトップラインです。


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左がHAYABUSA Ironの3番で、右があのTN-87の非売品プロトタイプの1番アイアンです。
こうして並べてみると1番アイアンなのにTN-87のほうがトップラインが厚いと言えます。


切れ味鋭い、極薄のトップラインにしています。


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この写真を見て頂ければ分かるのですが、ただでさえ薄いマッスルバックのトップラインを更に削ることで写真1枚めのような超極薄の難しそうなトップラインにしています。

ところでトップラインが薄いと難しいということをよく聞きますが、はたして本当にそうなのか?ということをファルコン的には疑問に思うんです。

優しいと言われているアイアンは、低重心=球が上がりやすい、芯が広い=打点のバラつきのミスに寛容ということが上げられますが、トップラインが薄いというのは単にそれだけでは難しいとは言えないのではないかと考えています。

確かにトップラインが分厚ければフェース周囲に重量配分をしやすいので芯は広くなります。
ですが、トップラインというだけあって分厚ければ分厚いほどに重心は高くなります。

低重心と芯が広いということは相反するということで、トップラインを分厚くした分、ソールにタングステンなどを入れることで高重心にならないよう苦労しているんです。

一方で深重心が優しいという考え方もあります。
深重心でのメリットはヘッドの左右MOIが高くなってミスヒットに寛容になるメリット、重心が深くなることでシャフトのしなり戻りが多くなり球が上がりやすくなるメリット、フェース面より後方に重心が来ることで多少振り遅れても球が捕まりやすくなるメリットの3つがあると言われています。

この3つのメリットが本当にそうなのかどうかはまだ完全に検証は出来ていませんのでどの程度のメリットが有るのかは何とも言えませんが、ドライバーなどのようにフェースの後方までヘッドが伸びていないアイアンの場合はポケットキャビティにしても深重心にするには限度がありますから、ドライバーのように深い重心に設計することは不可能です。

そうなるとアイアンの場合はポケットキャビティにして深重心にしてもドライバーほどのメリットはありません。
この段階でHAYABUSA Ironのポケットキャビティ化は無くなりました。

それと共にヘッドの左右MOIが高くなるメリットに関してはバックフェースの窪みを作ることでポケットキャビティ異常の左右MOIを実現していますし、球が上がりやすくなるメリットと球がつかまりやすくなるメリットに関してはクラブMOIマッチング専用設計とすることでポケットキャビティ以上に問題は解決されています。
すなわち、ポケットキャビティにするメリットはほとんど無く、逆にポケットキャビティだからこそ出てくるデメリット(重心が高くなってしまう)のほうが大きいのです。


では次に芯の広さに関して考えていきましょう。

芯の広さは重量配分をいかに周囲に分散させるかがポイントになります。
重量配分を周囲に分散させるにはフェースの裏を出来る限り薄くして、余った重量分を周囲に配分してやることで可能となりますが、先程書いたように低重心と芯の広さは相反する部分もあるためどこまで低重心を保ちつつ重量配分を周囲に持っていくかという問題が残ります。


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この写真のように、HAYABUSA Ironはバックフェース中央に大胆な窪みを設けて左右の重量配分を大きくする設計をしています。
この窪みによってフェース左右とフェースの下部に重量配分をして、フェースの上部に関しては無理に重量を配分することはしていません。
ぶっちゃけてしまいますが、フェース上部に重量配分しようとしてどんなにトップラインを分厚くしても実際のところそれほど劇的な重量を持たせることは出来ませんでした(当然やってみました)。

それどころかトップラインを分厚くすると重心はかなり高くなってしまったんです。もちろん見た目の安心感だけは分厚いほうがあるのですが、それ以外のメリットは感じられず、かえってデメリットばかり目立つようになってしまったのですね・・・。
(大手のメーカーさんはそうしたデメリットを払拭するためソールにタングステンなどの高比重の金属を入れたりして対策を講じていますが、BoseIronFactoryは完全な軟鉄鍛造に拘りたいですし、ソールにタングステンを入れると言った方法は極小規模のメーカーでは資本的に難しいんです)

そのためにHAYABUSA Ironでは上の部分に関しての重量配分に関しては考えないことにして、よりシンプルに左右と下部に重量配分することを優先したという訳です。


上部の重量配分を考えないことで、トップラインを超極薄にしたのですが、そのことで思いの外低重心にすることが出来ました。分厚くすると高重心になるんですから、薄くすれば当然低重心になります。

もちろん構えた場合の見た目もとても精悍なトップラインになり、ラインも出しやすいということもメリットとして考えられます(まぁ、ここは私個人の好みでもあります)。

また、基本中の基本、鍛造の設計に関しても十分に考えてあります。

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右と左のネック長ですが、一方がHAYABUSA Ironでもう一方が某社の鍛造フルキャビティです。
HAYABUSA Ironはマッスルバックがベースだと言うのにも関らず、フルキャビティのネック長より短いくらいなんです。

そのため全体の重心を低くなり、大胆な窪みを入れても左右の削る量が減るだけで済みます。左右の削る量が少なくなるということは逆に言うとそれだけ左右に対して重量配分が出来て芯が広くなるということにもなります。

では、もう一枚の写真を御覧ください。

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こちらも同じ某社のフルキャビティとHAYABUSA Ironを並べた写真です。
フルキャビティと比べてもHAYABUSA Ironのフェースの大きさが分かりますね。

こうした鍛造からHAYABUSA Ironは作られますので、マッスルバックでありながらフルキャビティ以上の優しさを秘めたモデルとして設計しています。


そうしてこのHAYABUSA Ironの形が出来てきたという訳ですね。


マッスルバックをベースとして、トップラインも極薄なのですが、大胆な窪みによる左右への重量配分やネックの短さ、フェースの広さによってマッスルバックの操作性はそのままにフルキャビティ以上の優しさを持ったモデル。
それがHAYABUSA Ironというわけです。

もちろんHAYABUSA Ironの凄さはこれだけではありません。

次回(ちょっと先になるかも)はHAYABUSA Ironのソールの秘密とソールによってもたらされる効果に着いてお話していこうと思います。