ゴルフ「北の国から」

ゴルフトゥデイでの連載「ゴルフ〜北の国から〜」をしていたファルコンまつばらです。 クラブMOIマッチングを中心とした理想の工房を北海道に作るまでの模様、そしてクラブMOIマッチングの今とこれからを中心に様々なことに顔を突っ込んでいきます(^^;; なお、純はもしかしたら出てくるかもしれませんが、蛍や五郎さんは出てきませんので、念のため・・・。

March 2024

今回はHAYABUSAIronの設計意図に関してお話します。

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まず一見して特徴的なバックフェースの窪み。

もう何度もお話しているので耳タコかもしれませんが、窪みを作る事で出来た重量をフェース左右に割り振ることで左右へのミスヒットに対して非常に寛容になっています。
左右に重量配分する事で左右にヒットポイントがズレても当たり負けする事無くボールを真っ直ぐ運んでくれるからです。

もちろん左右だけではなく、重心を下げて優しくする対策に関しても万全です。

トップラインが薄いのは実はそのためなんです。


ここで「あれ?トップラインが薄いのって、難しい象徴みたいなものでしょ?何でトップラインが薄いと優しいの?」と皆様は思うでしょうから、ご説明していきますね。

基本的にマッスルバックとしてはキャビティ並みの低重心の鍛造なのでそれだけでも十分と言えるのですが、更なる低重心化をすべくトップラインのバックフェース側を大胆にカットして、その分の重量も低重心になるよう下に割り振っています。

フェース面上下は左右と違って狭いので、実際のところ上への当たり負けはほぼ考える必要はありません。
ヘッド単体で考えると上への当たり負けの配慮も必要と思われるでしょうが、ゴルフはヘッドだけで行うものではありませんよね。
上にはシャフトとグリップという重量物が遠くにまで及んでいるため、さほど考えなくとも十分な重量が遠い位置にあります。十分な重量が遠い位置にあると言うことで慣性モーメントが非常に高くなるんです。
テーラーのQ10やPINGが上下左右の慣性モーメントの高さを売りにしていますが、どちらもヘッド単体での慣性モーメントです。
ヘッド左右の慣性モーメントに関してはヘッド単体で考えても良いのですが、上下の慣性モーメントはヘッドだけで無くシャフトやグリップを含めたクラブ全体の慣性モーメントを考えるべきなんです。

従って主に考えるべきは低重心化となりますが、HAYABUSA Ironの場合、バックフェースの窪みは考える必要はありません。
バックフェースの窪みで軽くなった分+アルファでバックフェース下部の左右に重量配分してありますので、窪みを考慮に入れる必要はありません。

つまりはHAYABUSA Ironをはじめ、JCM-01BLADEなどのトップラインが極薄なのは実は優しく球が上がるための設計なんです。


BoseIronFactory以外の全てのメーカーが、クラブ全体を通しての慣性モーメントを考慮していませんから、全てのメーカーがヘッド単体で優しさや球の上がりやすさを一生懸命に考えて設計しています。
確かにヘッド単体だけでも効果はあるんですが、「木を見て森を見ず」と言うか、「ヘッドだけを見てクラブ全体を見ていない」ということですね・・・。

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そのことをキチンと考えていくと、薄いトップラインは難しいどころか、薄いトップラインだから優しいし球も上がりやすいと言う業界の常識が「あれ?何か違うのかも?」と思えてくるでしょう。


また、HAYABUSA Ironの特徴として、フライヤーしにくいと言う特徴があります。
これはスペックとして目には見えにくい部分ですが非常に大切な事と考えています。

フライヤーはボールとフェースの間に芝を噛む事でスコアラインが仕事をせず、スピン量が低くなってしまうと言う事で起こります。
ボールが飛びすぎると言うのもフライヤーですし、もっと極端にスピン量が減ると逆に飛ばなくなるというのもフライヤーです。

芝を噛まないようにする事でフライヤーは起こらなくなりますが、絶対噛まないと言うことは難しいので、芝を噛みにくくする方向で対処することとなります。

HAYABUSA Ironではどのような対処をしてフライヤーを抑制しているかと言うと、ソールの研磨によって対処しています。
具体的にはリーディングエッジを丸く研磨する事なのですが、リーディングエッジを丸くする事で芝を切らないでいなしていくと言う方法です。

芝の長さって、トーナメントコンディションのラフでも地面からは10~15cmなのですが、実際にボールがある位置は地面よりもかなり上のほうです。
そして、ボールとフェースの間に芝を噛んでしまう距離も考慮するとボールがフェースに当たってから離れるまでの長さ(インパクトゾーン)を考えればOKです。
インパクトゾーンの長さっておおよそ17~20cmですので、その間に芝を噛まなければOKと言うこと。
芝を切り取らずにいなしていければ、ボールとフェースの間に芝が入ったとしてもホンの一瞬で済みますし、芝を噛んだとしても芝が切られなければフェースの上から下に向かって流れていく形でいなされていきます。
フェースの上側から下に向かって流れていけば、それはボールにバックスピンを与える形となります。

このことから、芝を切らずにいなしていくことが出来れば、
1.芝が噛みにくくなる
2.芝が噛んでも順回転ではなくバックスピンをかける方向になる
と言うことになります。

実際に三木プロも「ラフでもフェアウェイでもほぼ縦距離が同じなので、ラフからでもフライヤーを気にすること無く攻めていける。」と言う感想を頂いていますし、USGAプロの川村プロからも同じ感想を頂いています。

ちなみに三木プロからは「雨の日にはフライヤーするので何とかして欲しい」という希望ももらっていますが、こちらからは「素振りしたらちゃんとフェース面を拭きなさい。」と言う事しかアドバイス出来ませんでした(笑)
芝を噛む事はリーディングエッジ形状で何とか出来ても、雨露がフェースにつく事はさすがに無理ですから。

また、フライヤーしにくい事の他に縦の距離がどのようなライからでもほぼ同じでちゃんと計算できる。と言うのには理由があります。
フライヤー以外で縦の距離が揃わない原因としては、ライによってインパクト時のヘッドスピードが変わると言うことが上げられます。
これはフェアウェイなどの抵抗の少ない良好なシチュエーションでは100のチカラで100のヘッドスピードが出るけれど、ラフやベアグラウンド、ディボットなどでは100のチカラで90とか80しかヘッドスピードが出ないと言うことによります。

これも見た目のスペックには現れない部分ですが、BoseIronFactoryの場合はHAYABUSAウェッジで得た猛烈に抜けの良いソール形状と言うアドバンテージがあります。
HAYABUSAウェッジでは、ソールを前後左右とも丸く、玉子を半分に切ったようなフォルムとする事で抜けの良さ(抵抗の少なさ)を実現しています。

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もちろんウェッジのソール研磨をアイアンにそのまま採用する訳にはいきませんが、ウェッジの特徴である丸さはHAYABUSA Ironにも踏襲されています。
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そのためゴルフ練習場やショップで構えた時には座りが悪いと不評なのですが、実際の芝の上で構えた時にはちゃんと座るようになっていますので、どうかご安心ください。


次回はHAYABUSA Ironのデメリットに関してお話していきますが、その前に先日お伝えした英ゴルフマンスリー誌でBoseIronFactoryのJCM-01BLADEの0番アイアンが紹介されましたので、日本語訳と共にご紹介していきます。

キャビティが優しい理由は、バックにキャビティ(穴・へこみ)を作る事でその分の重量をフェースの周囲に配置したり、フェース面を広くする事が出来るからです。

このことをキチンと理解した上で設計や開発をしていかないと、キャビティでもマッスルバック以上に難しいアイアンになる事もありますし、逆にマッスルバックを基本としながらそこいらのキャビティ以上に優しいアイアンを作る事も可能です。

極端な例を上げるならば、ポケットキャビティでも零式よりも難しいアイアンを作る事も不可能ではありません。
まぁ、不可能ではないと言ってもポケットキャビティで零式より難しいアイアン作る意味が無いので作りませんけれどね(^^;;

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BoseIronFactoryで行っているのはこれとは逆で「難しく見えるけれど、実はキャビティ以上に優しい」アイアンです。

まずは優しいアイアンを作る上で、優しいの定義を今一度考えて行きましょう。

優しいと言うことは、ミスヒットに対して寛容であることを指すと思うのですが、それに関して異論のある方はいないと思います。

次にミスヒットに寛容であると言うことですが、ミスヒットとは?と言うこと、寛容とは?と言うこともキチンと理解しないと意味はありませんよね?

ミスヒットとは、
(1)打点に上下左右いずれか(若しくは2つ)のばらつきがある事
これにはダフりやトップ、シャンクも含みます。

(2)フェース向きが開いて当たったり閉じて当たったりする事

の2点がミスヒットの2大原因と言えるでしょう。


誠に申し訳無いのですが、(2)のフェースの開閉に関してはアイアンの設計ではいかんともしがたく、効果のある設計は出来ません。BoseIronFactoryだけでは無く大手メーカーでもそうです。
(でもクラブMOIマッチングではこの点も改善出来ますのでご安心ください)


次に「寛容とは?」という点ですが、優しいと言い換えても問題無いので、(1)のミスヒットがあっても「飛距離が極端に落ちる事無く、方向性もそれほど害されない」のが優しいと言うことでしょう。


では優しいアイアン、寛容なアイアンにするには何が必要かと言うと、

1.左右のミスヒットに強くするためにフェース左右への重量配分が必要である。
2.上下のミスヒットに強くするためにフェース上下への重量配分が必要である。

と言うことになります。
ここでクラブ設計家として注意している事は、1.の比率を2の比率よりも多く取らないといけないと言う事。
何故かと言うと、まずはフェース面を想像してください。

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アイアンのフェースは左右の長さに比べ、上下の高さは短いです。
ミスヒットするとしても左右のミスヒットはかなり広い範囲となりますが、上下のミスヒットはそれほど広範囲では無く、上の方で当たるとしたらダフりとなり、下の方で当たるとしたらトップとなります。
このように当たる範囲が比較すると狭い事から上下のミスヒットに関してはそれほど多くの比率とするべきものではありません。
ちなみにダフりに関してはソール形状である程度対応出来るので、もちろんHAYABUSA Ironなどではその対策を講じています。(このことは別記事で書きます)

なお、ミスヒットとは直接関係はありませんが、低重心のほうが球が上がりやすいことは確かなので、低重心にするための設計もしています。
HAYABUSAIronのトップラインが極薄なのはそのためで、見た目難しく見えますが、極薄にする事で重心を下げる役割があります。
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極薄トップラインで構えた時に難しいと思えるHAYABUSA Ironですが、
薄くする事で逆に球が上がりやすくなると言う”優しい”設計です。

これらの事により、優しいアイアンに一番必要な設計は左右へのミスヒットに寛容であると言うことになるのですが、実現するために一番確実なのがフェース左右に重量配分をすると言うことです。

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フェース左右に重量を配分する事で、当たり負けする事無くフェースが開いたり閉じたりして当たらなければ真っ直ぐに飛ぶと言うことです。
HAYABUSAIronのフェース中央の窪みは7番アイアンで約30gあります。
浮いた30gを15gずつフェース左右の下部に配分しています。

一般的なフルキャビティアイアンの場合では45g~60g程度の重量がへこみにより浮きますので、それを周囲に配分したりフェース面を大きくするために使っています。

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上がHAYABUSA Ironの7番、
下がJCM-03Cavityの7番です。

JCM-03CavityとHAYABUSA Ironの同じ7番を見るとキャビティのJCM-03のほうが一回りフェースが大きいです。
実はフェースを大きくするのに一番重量が必要で、JCM-03Cavityではキャビティにして浮いた重量が52gであるのに対して、37gはフェースを広く大きくするために使っています。

つまりフルキャビティのJCM-03Cavityでもフェースの周囲に配分できる重量は15gしか無く、且つ分かりやすい低重心にするためフェース中央の下部に半分以上使っています。

HAYABUSA Ironが通常のキャビティ並みに優しいと私も常々話していましたが、こと左右の重量配分だけを例に取ると、通常のキャビティ以上に左右のミスヒットには強いアイアンなんです。

ちなみにJCM-03CavityとHAYABUSA Iron、どっちが優しいの?という疑問もありますが、JCM-03Cavityはフェースも一回り大きいので、一概にどちらとは言えません。
どちらがより皆様に合うかはご相談くだされば、お答え出来ると思いますので、お気軽にご相談ください。

次回はHAYABUSA Ironの他の設計意図に関してお話します。

レフティの皆さん、大変お待たせ致しました!!

いままでのレフティモデルはJCM-01Lのみでしたが、ついにHAYABUSA Ironのレフティモデルが完成しました!!


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写真は右利き用ですが、レフティ用も全く同じに製作しています。

右利き用との違いですが、レフティHAYABUSAは3番相当20度からPW相当46度までのラインアップとなるところでしょうか。
あまり数が出るものではないので、1番相当14度から2番相当17度は完全受注生産となります。





本日より販売開始です!!
在庫には限りがございますので、多数のご注文を頂いた場合、生産までにお時間を頂く場合もございますのでお早めに!!

ありがたい感想を頂きましたので、久しぶりに掲載させて頂きたいと思います。

~~~~~~~~~ここから~~~~~~~~~~

使用した感想ですが、専門的なことは説明が難しいですが、
そのまま感じたことを伝えます。

まず、練習場でSW→PW→9→7→DRを打ち
最初に感じたのは「あれ?」です。
朝一で今日一?
まっすぐ飛ぶんです。

まあまあ
練習場が調子良くてコースでは結果が悪いことは度々あるので
コースでどうなるのか試してみてからと思い
練習していない7Wでティショットしてみました。

打った瞬間、ミスった(やや先っぽ)と思い打球をみたら
まっすぐ飛んでます。
また「あれ?」です。

2打目UT4使用し、ショットしたところ
またまっすぐ飛んでます。

どこをどうやったらこんなになるのか
このMOIすごいなあ~と感じながら
こんな調子で1日終わりました。

また、気にいったことは
自分のスイングの悪いところがわかりやすいんです。
クラブに変な挙動をあたえると、その様な球筋がでます。

もっと早くMOIすれば良かったと後悔しています。
引き続き、これからもよろしくお願いいたします。


~~~~~~~ここまで~~~~~~~

こうした感想を頂けることが、クラブMOIマッチングをやっていて本当に良かったと思わせてくれます。

引き続き、良いクラブを作ると共に良いクラブに調整していきますので、宜しくお願い致します。

ロングアイアンが打てなくて、UTは打てると言う方は多いです。

その理由にロングアイアンは飛ばない、球が上がらないと言うのが多いと思います。

ではなぜロングアイアンが飛ばない、球が上がらないと言う現象が起きるのか?とUTと比較していくことで考えていきましょう。

まず、飛距離に大きな影響を与える要素としては、ロフトと長さが上げられます。


話題のQi10UT(レスキュー)とBoseIronFactoryのJCM-01BLADEを例に取るますね。

Qi10UT(3番)     ロフト:19度 長さ:40.75インチ(ヒールエンド) 

JCM-01BLADE(3番)  ロフト:20度 長さ:39.0インチ(60度法)

KY274_zoom_D
KY274_zoom_D2
JCM-01-01
JCM-01-02




はい。ロフトで1度、長さでは1.75インチの差があります。
ちなみにヒールエンド法と60度法ではドライバーで0.5インチ程度、UTでは0.25インチ程度ヒールエンド法のほうが長くなりますので、実際には2インチ違うと言うことになります。
2インチ変わったらアイアンで言う4番手分ですから、そりゃあ飛ばない訳です。

一方で球が上がらないと言う点では、クラブMOIが大きく関係してくるので、Qi10UTとの比較でMOIマッチング専用ヘッドのJCM-01BLADEを出してくるのはズルした事になります。
ですので、そこそこ一般的な某社ロングアイアンの3番を比較していきます。
ちなみにQi10UTのほうが実質2インチ長いので、仮に同じヘッドとシャフトだったとしたらクラブMOIは大幅に増加しますが、とりあえずその部分は目をつぶることとします。


Qi10UT(3番標準カーボンシャフト)  クラブMOI:2640kg-cm²

某社3番アイアン          クラブMOI:2720kg-cm²


80kg-cm²の違いと言えばおおよそ8番手分ですので、Qi10がPWとすると某社3番アイアンは3番アイアンの振り心地となります。
それでは球が上がらないのは仕方の無いところと言えます。


また、昨今のアイアンのストロングロフト化で3番アイアンからラインアップしているクラブも少なくなりました。
ですが、少なくなった3番アイアンのロフトをストロングロフト化してロフト差を3度ピッチや4度ピッチで設定すると3番アイアンで12度とかになってしまうので現実的ではありません。

例えば同じTaylorMadeのT790アイアンは3番から設定がありますが、3番アイアンでロフトが19度、4番アイアンでロフトが21度となっています。
通常で4度ピッチや3度ピッチですから、2度ピッチでは飛距離の階段は出来ません。
ちなみに4番と5番では2.5度ピッチ、5番と6番で3.5度ピッチ、6番と7番で4.5度ピッチですから4番も飛ぶようには設計されていませんね。



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